1/03/2020

立山信仰1200年の歴史にふれる旅

11月の中頃に富山県より立山信仰について学ぶお話を頂き富山へ飛び発ちました。

東京駅から北陸新幹線に乗り2時間ちょっとで富山駅に到着
富山駅から立山駅へは富山電鉄が利用できます
富山電鉄

日本には三霊山と呼ばれる山が3つあります。
富士山(静岡県~山梨県)、白山(石川県~岐阜県)、そして立山(富山県)の三山です。
今回訪れた立山は古来から信仰の対象となって来た山と言う事で、
その信仰の歴史も古く、1200年以上も前に編纂された万葉集にも歌われて居ます。

今回富山駅から立山へはタクシーを利用しました
赤く色付く木々と雪の立山連峰が見れました

日本では昔から土着的に山や谷、海や川を崇拝する自然崇拝と呼ばれるものがあり、
自然を崇拝することで自然の恵みを得たり、自然災害から守ってもらう事を祈って来ました。

紅葉の美しい常願寺川

大きな木や岩、池や山などは神宿る場所としてまつられましたが、
美しく、そして高くそびえる立山も信仰の対象とされてきました。
のちに神聖な場には建物が建てられるようになりそれらは神社となりました。
6世紀になり仏教が伝来すると、これまでの自然崇拝の形をまとめて神道と呼ぶようになりました。

最初の目的地は富山県・立山博物館。立山の自然や、大宝元年(701年)の佐伯有頼の開山伝説、立山信仰、立山曼荼羅などを総合的に展示、解説している場所。立山信仰を知るには必ず立ち寄りたい場所です

日本に神道と仏教が混在するようになって以来、『あの世』と呼ばれる
死後の世界が立山山中に存在するものとされて来ました。
平安時代には立山に地獄があり、日本中の亡霊が集まる場所と考えられるようになり、
鎌倉時代からは地獄と浄土の両方が存在するように考えられるようになりました。

立山博物館の西隣にある雄山神社、中宮祈願殿。佐伯有頼により開かれた。かつては中宮寺と呼ばれ、神仏習合の施設だった。
雄山神社の境内の杉林。立山(雄山)山頂の峰本社に参拝出来ない時期にはここ中宮祈願殿と、別の場所にある前立社壇に参拝する事でも同じご利益が得られるそうです。
七五三で訪れていた親子に許可を得て写真を撮らせて頂きました。

この様に考えられるようになった理由は何と言っても実際にある立山の自然、地形には
地獄や浄土を想像させる場所があるためです。

立山博物館の東隣りにある教算坊。江戸時代から残る2軒の宿坊のうちのひとつ

『立山曼荼羅』と呼ばれる図柄を見ると立山の自然を舞台に地獄と浄土が描かれており
現実の世界とあの世が繋がっている事を連想させます。

教算坊内にて立山博物館の学芸員の方の解説で立山曼荼羅について教わりました

立山曼荼羅に描かれた地獄は恐ろしく、様々な罪を犯した人が行く事になる地獄が具体的に描かれて居ます
普通の人であれば絶対にそんな地獄には行きたい筈も無く、日頃の行いを見直し、
心を改めさせられる事もあったのではないかと思います。
罪の大小に関わらず、人間なら生きていれば何らかの罪を犯してしまうものかと思いますが、
地獄に行かなくても済む方法があるのであればそれにすがりたいと考えた人も居た事でしょう。
実際に男性は ”立山を登る事” で、女性は ”布橋灌頂会(ぬのばしかんじょうえ)” に参加する事で
あの世とこの世を往来する体験を行い、生前の罪や穢れを浄化し、
死後に地獄に行かずに済む事を約束されたと言われて居ました。

布橋。明治初期の廃仏毀釈により廃れてしまった布橋灌頂会の儀式は平成8年に再現され、以来現在まで数年に一度開催。儀式では女性はこの布橋を目隠しして渡ります

江戸時代には立山麓の町、芦峅寺の集落にあった33軒の宿坊の主人達は立山曼荼羅を手に全国を回り、
立山に登拝する事の意味を解いて回ったそうです。
立山登山の為には麓の町での宿泊施設も必要と言うわけで、
いわば自分の宿に泊まってもらう為の営業活動のような形でもあったようです。

門だけが残された宿坊跡
布橋を渡ったところにある立山博物館・遥望館にて立山開山伝説の映像などを見ました
遥望館で映像を見終わると奥には立山が見えるはず、、、でしたが雲に覆われて見れませんでした

富山の薬売りと聞けば有名だと思いますが、薬売りにもこの立山曼荼羅を持たせて
全国を回ってもらい登拝者を募っていたという事もあったそうです

立山まんだら遊園。立山曼荼羅の地獄と極楽の世界観を芸術という形で表現したテーマパーク
立山まんだら遊園は立山博物館から徒歩10分ほど
まんだら遊園から見下ろした常願寺川

立山曼荼羅の効果は絶大で300年ほど前でも年間6,000人の登拝者が居たそうです。
まともに立山山頂まで登れる季節は年に3か月間(7~9月)だけですので、
夏場は1日あたり20人以上の人が3000m級の山の山頂を目指し山へ入った事になります。

山菜、野菜たっぷりのつぼ煮など、この地域の宿坊で食べれたであろう地元の食材を使った食事を頂きました。
仲語(かつての信仰登山の際の案内人)の服装を着た山岳ガイドの佐伯智彦さん。佐伯有頼と同じ佐伯姓を持つ方はこの地域には大勢居られるそうです。
この日宿泊したホテル、森の風のロビー
温泉に浸かり汗を流したらお待ちかねの夕食タイム。蟹づくしの会席料理を堪能しました

立山の高さについてですが、立山連峰の主峰には3つの峰があり、雄山(3003m)、大汝山(3015m)、
富士ノ折立(2999m)の3つをまとめて立山と呼んで居ます。
雄山山頂には雄山神社の峰本社があり、現在の登山、登拝の目的地になって居ます。
夏場の登山期には神主さんも常駐され、御朱印を書いてもらうこともできます。

立山駅。現代の立山登山、アルペンルート横断の富山側のスタートはここです
立山駅から美女平までケーブルカーで登ります

3003mの登山とは言え、麓の立山駅(標高475m)から美女平駅(同977m)まではケーブルカー、
そして美女平から室堂(同2450m)までは立山高原バスを乗り継いで来ますので、
立山登山をする場合は一般的には約550m程の登山となります。
勿論もっと下から宿泊をしながら登ることも可能です。

立山高原バスで室堂までの登る際は左側の座席がお勧め
美しい雪山が段々と近づいてきました

麓の立山駅ではトレッキングシューズや防寒着などの装備をレンタルしていますので
何も用意をしないで来ても気軽に立山登山を楽しむ事が出来ます。

結構登って来てましたがまだまだ登り続けます。樹木限界が近づいて来ました
奥の方にチラッと見えた剱岳(つるぎだけ)山頂。その奥の波打つ雲が不気味です

現代の立山登山には昔のような浄化の意味で山を登る人の数は少なくなりましたが、
アウトドアレジャー登山の目的地として立山は人気があります。
もちろん今でも昔の登拝者が見た景色と同じ景色を見る事が出来ます。

室堂に到着
室堂に着いたら高地に馴染むためにも喫茶店で一旦休憩
頂いた水出しアイスコーヒー。純銅製のカップは熱伝導率が高く、冷たさが持続するそうです

以前このアルペンルートを訪れた際には長野側からスタートし、
黒部ダム、大観峰を経て室堂までやって来て、美女平、立山駅へと降りるルートを辿りましたが、
今回のように富山駅からスタートして立山駅、美女平を経て室堂までを目的地とする
アルペンルート観光も良いものだと思いました。

山岳ガイドの佐伯さんからも立山曼荼羅を解り易く解説して頂きました。佐伯さんは富山県で初めてエベレスト登頂を成功させたアルピニス

11月半ばと言う事で室堂は一面の雪野原でトレッキングも短時間しかできませんでしたが
とても素晴らしい景色を見る事が出来ました。
いつかは雄山山頂までの登山(登拝)も体験してみたいと思います。

雄山山頂の峰本社は1996年に136年ぶりに建て替えられました。旧神殿(1860年造営)の旧部材と新材を使って復元されたものがホテル立山内に展示してあります。

室堂の夏場のトレッキングは小径が沢山整備されて居ますが、冬場は雪で覆われて居ますので何処に何があるのか
さっぱりわかりません。

室堂ターミナルの外は一面の銀世界。11月中盤のこの日、気温はまだゼロ度を下回って居ませんでした
トレイルマップは一応ありますが道は見えませんので張られたロープを超えないように注意は必要

真冬になるとこの辺りの積雪は20m程になりますが、場所によっては積雪が60mになる場所もあるとの事。
万年雪が固まり氷河となる場所もあり、ここ立山には氷河が3か所確認されています。
そのうちの1つは雄山の山頂から見る事が出来るとの事です。

室堂にはホテル立山以外にも宿泊施設、温泉施設があります
みくりが池。以前10月にここに訪れた際にはこの池のほとりに前年からの残雪がまだ見られました

雄山に登山、登拝をするには室堂ターミナルから山頂まで約2時間かかるそうです。
山頂を目指すなら室堂に1泊し、温泉やトレッキングなども併せてゆっくりと楽しみたい所です。

今回は雪の為に行けなかった昔の修行僧の宿泊施設(右端)
以前訪れた際に撮影した際の室堂

私たちは雪中トレッキング?を少し楽しんだ後、再びホテル立山内の喫茶店に戻り昼食を頂きました。
昼食後は少しお土産を買い、再びバスで美女平へ下り、ケーブルカーで立山駅へと戻りました。

ランチに頂いたカレーライス
再びバスに乗車し、美女平へ

今回は立山・室堂を目的地として、立山信仰と言うものにふれる旅をしてみましたが、
富山側だけでも見どころが多く、たっぷりと楽しむ事が出来ました。


立山には途方もないくらいに古くから残る神話があり、歴史もあり、
単にアルペンルート観光をするだけでは気付かなかった世界がある事にも驚きました。
富山側から立山を目指すアルペンルート観光は日帰りも可能ですし
時間に余裕があれば1泊もお勧めです。
機会があれば是非、富山からアルペンルート、立山を訪れてみてください!


アクセスマップ


以前のアルペンルート観光の際のブログはこちらをご覧ください。


■ ご案内
・2020年のアルペンルートの全線開通日はまだ未定ですが、2019年は4/15から11/30まででした。
3月からきっぷの販売が開始となりますので詳細はウェブサイトをご覧ください。
・ アルペンルート、立山博物館などへの個人、団体チケットの事前お手配などは訪日課までお問い合わせ下さい。
立山信仰を体験する幾つかのプランもご用意ございます。  
・立山博物館を訪れる際には学芸員の方による解説(日本語のみ)を付けられる事をお勧めします。弊社で事前にお手配が可能ですのでお問い合わせ下さい。スマートフォンを使って展示の案内を音声と文字で案内する多言語ガイドシステム(英語、中国語、日本語)もご利用頂けます。

■ 今回訪れた場所
立山博物館:〒930-1406 富山県中新川郡立山町芦峅寺93-1  
室堂ターミナル(ホテル立山)〒930-1414 富山県中新川郡立山町芦峅寺室堂 
ホテル 森の風 立山〒930-1454 富山県富山市原3-6  
雄山神社:〒930-1406 富山県中新川郡立山町芦峅寺2番地  
教算坊:〒930-1406 富山県中新川郡立山町芦峅寺 
遙望館:〒930-1406 富山県中新川郡立山町芦峅寺  
まんだら遊苑:〒930-0200 富山県中新川郡立山町芦峅寺

■ お問い合わせ:IACEトラベル、訪日課 info@iace-asia.com

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